今年のベストはアルブレヒト・デューラー『測定法教則』注解を買ったこと。
デューラーは画家として有名で、この本も中央公論美術出版から出ている。正式には『線、平面、立体におけるコンパスと定規による測定法教則、理論を愛する全ての人の利用のために、アルブレヒト・デューラーの著した説明図付きの書、1525年印刷』と訳されるそうだ。
放送大学で去年履修した三浦伸夫『数学の歴史』で知ったのだが、この三浦教授が第二編で「数学史におけるデューラー」という解説を書いている。
デューラーには「若者が基礎を弁えずにただ日常的な慣習だけから学び」「無知のままに成長し」「無思慮に自己の好みのままに作品を作った」という不満があった。絵画に必要な数学的知識を若者に教え、絵画に数学的な基礎付けをすることで、技芸から学へと高める目的があったという。これは自分がクリエイティブコーディングに感じている不満に通じる。単純に現代的な感覚に引き付けて考えるのは危険だし、数学が基礎付けられることで学術となるか、それが正しいのかは自明ではないが、「蜘蛛の形の関数」や、アルファベットの書き方も解説していて、さながらクリエイティブコーディングをきっかけにプログラミングに興味を持ってもらおうとする現代の教育者のようだ。証明はなく実用に重きをおいた内容ではあるものの、高度すぎて若者に数学を理解させるという目的は達成できていない、というのが現代での評価ではある。コンピュータの恩恵に与り、テキストだけでなくゲーム的な仕組みでそこを乗り越えるのが自分の研究になると思う。
先日、高木隆司が立ち上げた「形の科学会」のシンポジウムがあったので聴講してきた。学生時代は学会に入っていなかったのだが、改めて学術コミュニティっていいなと思った。全ての発表に質問する先生や、御年84歳で新しい理論を発表し続けている宮崎興二先生を間近で見て、大変に刺激になった。
実は『プリンストン数学大全』も買ってしまった。なかなかの出費の割に全然読めていないが、読もうと思えばいつでも読める安心感に価値がある。
この記事は 2024 Advent Calendar 2024 の15日目でした。14日目は juneboku さん、16日目は xKxAxKx さんです。お楽しみに。