クロアチアに1週間ほど滞在し、展覧会のオープンを見届け、無事帰国して参りました。
今回僕達を読んでくれたのはKONTEJNERという団体で、インディペンデントで展覧会などの企画をしている。
クロアチアの「Device Art」と日本の「デバイスアート」は、名前は同じだけど少し性格が異なっていて、それをうまく対比させる目的があったようです。トリエンナーレ形式で、今回が3回目。IAMAS関係者が多いのはアルスエレクトロニカでのキャンパス展が面白かったかららしい。
確かに日本の作品はプロダクトのような形式なのに対し、クロアチアやスロベニアの作品はキネティックスカルプチャーと言った感じ。同じなのはそれぞれ身の回りにあるものや技術を使って作っているということや、ナンセンスであるということ。ナンセンス、というのは微妙な表現だな。明らかに遠回りで、冗長なのだけど、だからと言って単に意味がないという訳ではない。
初日
マヤとステファンが空港まで迎えに来てくれて(ステファンがデバイスアート展のポスターを広げながら待ってた)、滞在するユースホステルまでの途中、建築中のクロアチア初の現代美術館や図書館、コンサート会場などを教えてくれた。
ホステルに着くとIAMASの先輩達が待っていて、一緒に夕食。案内してくれたのはマリーナ。ボランティアで展覧会のこととか全然知らなかったけど日本文化を勉強してるからってので頼まれたらしい。こういう感じが最高。
成田からフランクフルトまでの機内食を普通に夕食レベルで食べ、フランクフルトからクロアチアに来る途中のフライトでもサンドイッチが出て、しかも近くに乗ってた日本人のおばちゃんが食べられないからってくれた分まで食べてしまったので全然お腹は空いてなかったけどスープやサラダを食べた。おいしい。オリーブオイルやバルサミコ酢が新鮮な感じ。
食事後は僕とそう君、マリーナで夜の街へ繰り出す。マリーナの友達も合流してクラブ的なところへ。凄く混んでた。
2日目
展覧会場に入って準備。ビゴルとカメリアが連れてってくれる。カメリアはジャパノロジーを勉強していて、百人一首とか和歌を勉強したらしい。英語で話してたら「日本語でいいですよ」と言われ、帰ったらもっと英語勉強することを決意。カメリアは日本語に訳すと椿。
会場は隣がMočvaraというクラブで、元々は鉄工所だったところを改装した建物。若者には人気の場所らしい。クロアチアのこういうとこはあんまりガイドに載ってないしネットでも見かけない。
お昼は会場近くのサンドイッチ屋でサンドイッチを頼む。チーズとかハムとかが挟んであるパンを選んで、トーストしてもらう。野菜とソースを選べるが、野菜は何種類選んでも料金は同じ。今回の企画を手伝っていて、ベルリンで活動しているサウンドアーティストの森田さん、IAMAS後輩のそう君と近くの川岸で食べる。
3日目
オシロスコープも届き、勘で使い方を覚えながら調整。読めないというほどではないが何故か波形が汚く読みにくい。マシンはMac OS10.4でPPCのminiMac。最新のProcessingだと起動しなかったが(おそらくstartup commandの問題)1つ前のバージョンにしたら動いた。
夜は川北さんと渡邊君で軽く御飯。ピザなど。
4日目
会場での作業が本格的になってきて、暖房が入った。
これで温風が送られて会場が暖められる。
中から見るとこんなの。
僕の作品は2階で、温風が来なくて寒かったが、キュレーターのオルガがアウターを貸してくれた。
マシンを直前で手配できたiMacのSnow Leopardに取り替えてもらった。動作が軽くなり波形も綺麗になる。動作が重い→音が悪くなる→波形が汚くなる、と推測。
代わりにAWTのTextEditorから日本語入力ができなくなるが、使うのはビゴルとカメリアくらいなので今回はこれでいくことにした。。本当にコンピュータはわからないことだらけで、よくこんなものを使って作品なんて作ってるなと毎回思う。僕はあまり作品という意識はなく、自分用だけど。
オープン前日という雰囲気では全くなかったが、森田さんは「できちゃうんですよねーこれが。去年もそうでした。」と余裕。
5日目
オープンは19時からで、本当に沢山の人が集まった。森田さんの言葉通り、ちゃんと展覧会ができ上がっている。
彼はオープニングに合わせて髪を切ってきた。流石です。
キュレーターのスンチザに教えてもらった店で切ったらしいんだけど、普通の家を改装したようなところで、鏡とか椅子とかがアンティークな感じだったらしい。「自分の好きな部屋で、好きな客の髪を切りまくる、というのは良い仕事だね」という話をした。僕はずっと坊主で自分で切ってるけど、そういう店なら行ってみたい。
山辺さんの作品前で記念写真を撮るのが流行った。左端に写っているのがマルコで、今回の会場の設営のリーダー。展示台やスクリーンは全て発泡スチロールで、会場の照明は青とブラックライト。建物の雰囲気によく合っている。
Močvaraでサウンドイベントが始まる。オープニングということでハウスとかがかかってパーティ!って感じかと思いきや本気のノイズだった。
23時過ぎても全然人が引く気配がなく、0時過ぎてようやく閉めたんだけど、平日だし次の日も平日なのに本当に皆元気でびっくり。ちゃんと遊んでちゃんと仕事もする感じはYCAMとかにも近いかも知れない。
6日目
プレゼンの日。と言ってもツアーしながら各作家が説明をするだけなんだけど、作品がインタラクティブなだけに質問と体験が一緒で、次第に人が拡散してしまい、僕に回ってくる頃にはもう個別にどうぞって感じになった。もうひとつの会場Nanoもオープン。寿司バーが隣にあって、ケータリングしたらしいけど、着いた頃には全部なくなってた。ひたすらワインを飲まされ、また夜の街に繰り出して飲んだ気がする。
トラムは24時間動いていて、結構深夜でも皆遊んでいる。4時になると警察が来て強制的に全ての店が明るくなるそうで、どんな悪そうな奴もちゃんとそれで帰るらしい。見てみたかった。
7日目
スンチザの家でホームパーティをしようということで、森田さんやウィルと一緒にマーケットで買い物。
魚市場もある。マグロとサバっぽいのとサンマっぽいのとニジマスっぽいのを買う。
寿司、サバっぽい味噌煮、サンマっぽい刺身、ニジマスっぽい塩焼きに決定。
昼頃に一旦解散して僕らはお土産を探したり。
クロアチアのデザイン協会。ギャラリーができたのは最近らしい。
HelveticaでHrvatica(クロアチアの女の子という意味)と書かれたTシャツと協会の年鑑を買う。おまけでTシャツをもう一着もらった。クロアチア語版のQuick brown foxみたいなやつ。
スンチザはいつも変わった服を着ていてお洒落なので、そう君がどこで買ってるのか聞いた。最初は一緒に買い物に行く予定だったけど忙しくて都合がつかず、ステファンが連れて来てくれた。彼も忙しいのですぐまた戻って行ったのだけど。
prostorというクロアチアで唯一のストリートスタイルの店で、取り扱ってるブランドや展示してる作品はほとんどクロアチアの作家によるもの。一周年記念で今まで展示した作家の作品を並べてるらしい。バッジを買う。ここもガイドには載ってなくて、中心地には近いけど普通には見つけられないところにある。流石にキュレーターはいいものを知っている。
会場近くでやってたサーカスを見て、スンチザの家へ。
彼女はラム肉を焼いてくれて、僕らは森田さんを中心に魚料理を作った。僕はほぼ洗い物係。学生時代もそうだったけど、できるアーティストは確実に料理がうまい。曰く「アーティストは味覚に敏感じゃないとね」。
おそらく味覚もそうだけど素材選びから調理の段取りから食べてる時の会話まで、やはりこういう場では問われるという印象。
猫抱きまくり。
8日目
滞在最後の日。午前中は散歩しつつお土産探したり。午後は会場で皆にお別れの挨拶して、カトリーナに車で空港まで送ってもらう。彼女はアニメーションが作りたいらしく、日本のアニメにも詳しかった。渋滞ですごく時間がかかって、ちょっと乗り遅れたら良いのにと思った。
本当にこれからって感じで、30歳くらいの人達に熱気があって、面白くなりそう。
森田さんも話していたのだけど、毎回成立するかしないかギリギリの感じだけど、意外と本質を突いているというか、「これでいいんじゃん」という驚きがあるらしい。何より熱意と勢い。そういうのに「やられてしまった」と。
普通展覧会を開くとしたらどこかの大学や美術館、ギャラリーに所属してとか、資格が必要だとか考えてしまいがちなものだけど、とにかくやってしまえばいいんじゃないかということ。
いつだって何かにやられてしまいたいし、後先考えずにやってしまいたい。勿論クロアチアと日本では状況も違っていて、クロアチアの場合はKONTEJNERが今まさに一番上の世代。日本にはもう既に色んなものができてしまっている。
人口も違うし、働き方も違う。山辺さんの作品が動いてなかった時に、日本時間で23時くらいだったにも関わらず普通に事務所につながったことに皆驚いていたらしいが、日本はそうでもしないと回らない仕組みになっている。普段働いている時にも無駄なこととか、こんな作業いらないのではと思ったりするけど、経済を循環させるという意味や、雇用を創出するという意味では仕方ないのかも知れないとも思う。でもおそらく皆もっと本質的なこととか、直接反応が返ってくるようなことを求めていて、サードプレイスみたいな発想が生まれてくるのだろう。
帰ってくる途中の飛行機のニュースでは子育て給付金や失業率がどうのという話題。放送された短い内容だけでは判断できないが、インタビューされている人は「給付金が出たら寿司を食べたい」と言ってたり、「政府には安定した雇用を作り出すよう努力して欲しい」みたいなことを言っていて、これでは駄目だろうなと思った。勿論こういうことが最低限保証されるのはいいことだとも思うし、泥沼から抜け出す第一歩のためのセーフティネットは必要だろう。けど、考え方から変えないといけない気がする。先日会社の先輩と温泉に行った時にご一緒した伊藤さんが考えてることとか、面白いと思う。彼は建築や食べられる野草にも詳しく、モンゴル武者修行ツアーを組んだり、パン教室を開いている。
だらだらしている間に27歳になってしまったが、しがらみとか失うものがない今がちょうどいい時期なのかも知れない。何となく考えていることを実行に移していきたい。
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