木曜日, 6月 21, 2007

20070620

読書順調。前日アルバイトの帰りに舞城王太郎の「みんな元気。」文庫が出てたので買う。舞城が好きなのは深刻な時に人間は変なこと考えるってとこがちゃんと書かれてるから。

身近な人が突然死んだとして、勿論悲しいんだけど、それより「今日の分は作り置きがあるけど、明日から誰が御飯作るんだろう」とかそう言うことを思ってしまう。別にその人を御飯作りマシーンと思ってた訳じゃないし、他に思うべきことはありそうなものだけど。で、その言葉はどういう心の動きから生まれて来たのかわかんないくらい複雑な感情を経たものではあるはずなんだけど、もしその言葉だけをいきなしその場で口にしたら「何言ってんの」という話になる。けどそういう気持ちは確実に存在するし、「ここでこういうこと言うべきじゃない」ということも勿論考える。それは多分、他人は自分の心に起こった感情と言葉の飛躍はカウントしないで表面の意味しか受け取ってくれないと思ってるからだろう。何か舞城はその辺の気持ちとか気分の移り変わりの瞬間を丁寧に抽象化してる気がする。

対人関係で一番難しいのは、その言葉が実際に指し示しているところが違うにも関わらず、字面が一緒であったりしてしまうために誤解が起こってしまうこと。ある言葉に対して思い浮かべるイメージは人それぞれで、ディティールを詰めていけばいくほど違ってるはず。にも関わらず自分が納得できる言葉が納得できる文脈で使われてないと理解しない、あるいは自分が考えているイメージに引っ張られすぎちゃう人ってのが居て、困ったものだよなぁと思う。その人が、というよりは言葉っていう仕組みそのものが。

jamesがちょっと前に水着の女の子が載ってる漫画雑誌が転がってるのを見かけて「Pornography, everywhere...」とため息をついてたのが印象的で、やっぱ水着だったらセーフ、脱いでたらアウト、とかそういう単純な話じゃないんだよなーと改めて思ったりした。

で、そんなことを考えたりしながら録音室で作業しようと思って事務に鍵を借りに行くんだけど、リストに載ってない人は駄目、って言われる。推測するにそのリストは録音室使用説明ワークショップに参加したか否かなので、僕はそれ既に受けてるから大丈夫だと思う、と言い、事実過去のリストには僕の名前が記載されてる。過去のものが有効かどうかはわかんないから確認してもらますか、と言われ、無効だったら過去のものは捨ててしまえばいいはずで(というかややこしいから捨てるべき)、何でそれがそこにあるか考えれば答えは出そうなものだし、あなたが確認するのが筋じゃないですか(リストにない人はどうすればいいのかとか知っといた方が今後のためにもなるんじゃないですか)、とか思ったんだけどそれらを説明すると人間としての生き方とかを色々言わなきゃならなくなって面倒だし分不相応だったのと、何かしら向こうにも事情(たまたま体調が優れなくて気分が悪かったとかでもいい)があったりするかもしれないから引き下がった。

とは言え、僕が録音室を借りるのは就職に向けて納得いく音楽を作るためで、今の忙しさを考えれば早いとこ作業にとりかかれないとまずいのだ。締め切りに間に合わなくて就職できなくて負い目を感じながらその後の人生を過ごし、何かのタイミングで今日のことを思い出して、許せない気持ちになるのか笑い飛ばせるのかは知らないけど、「鍵貸して下さい」にそれだけの情報を詰め込めないし、そういう事情を説明してもいられないし、相手にそこまで汲み取れというのも無理。困ったなぁ、と。

「残念ながら、ヒトの知性はこの種の問題を解くのが苦手である。ヒトは、中央集権制をはじめ、一連の明快な命令、因果関係のようなわかりやすい思考法に慣れ切っている。ところが、大規模な相互作用系では、各構成要素が最終的に影響を及ぼすため、標準的な思考法では歯が立たない。単純な図式や言葉に頼った議論など、あまりに説得力がなさすぎるのであり、あまりに近視眼的なのだ。」
— スティーヴン・ストロガッツ「SYNC」

そういうことをグチグチ思ってるかと思えば、スッと切り替えてさっきまで考えてたことなんてなかったみたいにプログラミングとかできちゃうから便利だなぁと思う。

三輪先生と面談。次のステップが見えた。

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